溢れる、からだ…陽炎、シルエット。
たちばなまこと

きき手の手首が
にぶい痛みを届けてくる
午前二時に起きて
針を持つ
からだの芯部から
花びらが
溢れて
とめどなく溢れて
殺風景な部屋を赤やピンクに
踊らせる

女は陽炎を抱えきれなくて
泣いている
男たちは
泣けない眼球を天井にやって
遠い日のあたたかいシーンを
たぐり寄せようとする

実態のわからない心
息を吹き込めば内と外が逆転して
火の国
渦巻く感情の鳥に
ついばまれても
動けない

大きな声でしなりたい
小さな声で「好きだよ」と言いたい
ささやく
幾つも重ねて
厚く仕立てたい
青い姿の女の子が言う
「私は食べものよ」
そうじゃないよ
小さな電球に許された
シルエットになりたい
ただの
まっすぐな感情で


自由詩 溢れる、からだ…陽炎、シルエット。 Copyright たちばなまこと 2010-05-22 22:51:17
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