革命家はいらない
高梁サトル

綺羅星の王冠を眺めながら
骨のようにかたい胡桃をほうばる

失楽園からの贈物に
境目のない儚い理想を夢見ながら

昨日の怒りを
今日の喜びとして享受して

往ったり戻ったりする荒野の
彼方で青鷺の鳴き声を聞きながら

目覚めては存在しない指先の
輪郭を眺めては安心する

薄情な朝陽が黒星病を照らす残酷さに
不屈の魂を育てることを決意して

世界の果てでも見てきたような耳元で囁く
あやふやな信仰を抱えた過去を戒める呪文

「がんじがらめの愛にはスペインの長靴を」

アイシテルが聴こえない革命家ならいらない
孤独な原始細胞が歌う葬送曲

夜空を仰いで涙できるなら他に何を望む
欲望の先の果てのない闇か

戦士の鎧に刻まれた死神の刻印が疼くのか
地を焼き尽くすその火の吐息で滅ぼしたいものは

おぞましき細胞
膨張しては消滅してゆく

それでもおまえは
泣いて縋る者さえ退け血を流す

自らの棺桶さえ始末できないくせに
声高に革命を謳い剣を振り翳す


自由詩 革命家はいらない Copyright 高梁サトル 2010-05-18 20:45:24
notebook Home 戻る