明星
あぐり

待つことは得意で
この部屋に漂うちいさな粒たちを見つめている

名も知らぬ六等星のような
ささやかな薫りでこの額を満たし
右足の小指が凍り付く夜には
息を吸う度に、
わたしの声帯を傷付ける
ささやかなささやかなあなたの残滓です


(どうして耳朶に囁きを纏わせながら
どうしていっしょに見つめあえないの)


わたしのからだの不都合な仕組みが
それでもあなたをただしく求めている。
かたくなに握りしめた掌に
食い込むような爪を持たずに

ふるっと
肩をちいさく

今夜あなたはわたしを夢にみるでしょうか
その透き通る睫毛の先にすこしでもわたしの残滓があるなら
この瞼にあなたの心音を。

ひとりの体温で浸している夜
I love you を訳していた





自由詩 明星 Copyright あぐり 2010-05-16 23:11:01縦
notebook Home 戻る