蝶の廃棄
楽恵

                    
内地から釣りに来た太陽と恋人たちを
島尻の斎場御嶽にガイドする。
財布から百円玉を取り出し受付機でパンフレットを買うのを指笛に
午後の観光が踊る。
薄深い御門口を越えて
「こちら側から聖域となりますが
逃げ場のない切り裂け岩の舞台では、見つかった人の魂はいつも蝶になるしかありません。」

断崖からグリーンボトルが漂着すると、
魚舟のために風が布く。
ゆっくりした低気圧がニライカナイから近づいてくるのを
時化た海の舌が味わい直感する。
クバを揺さぶり訪ねて
奥深い三庫理に辿りつく。
風抜けて穴閉じる、サキがいよいよ近い。
未知
果てて
内地の恋人たちと一緒に、三庫理から久高を眺める。
久しく貴高いシマ。
あの島にハブはいないが
私の昔の恋人が、不法投棄され、埋められている。
あの、くだか。

破れた茣蓙に座っていたユタの女が近くで骨の匂いのする線香を焚いた瞬間
降り始めたアマ粒で
世界遺産に登録されている金色の文学が次々と滲んでいった。




自由詩 蝶の廃棄 Copyright 楽恵 2010-05-14 19:19:11
notebook Home 戻る