たちばなまこと

鳴りやまない星が
寝床に降る
重さに抱かれるように目を閉じる
もしかして
もしかして
もしかしてと鳴りながら

おなかの中を撫でられつづける
そのまま長い針がひとまわり
するまで
くるしいよ
友だちに遠く打ち明けても
窓ガラスに走る水滴のような
まつげの先に
星は鳴りやまない

街角のスーツケースにぶつかる
私は帆布に針を忍ばせている
気をつけて
どうか気をつけて
ここは熱い街だから
帰りたい帰りたくない帰りたい
帰りたくない
帰りたくない理由が膨らんでゆく
帰りたくないんだね

向いの席と長く目が合う
ドアに反転したiPhoneと目が合う
新聞の向こう側に目を逸らされる
カフェフラペチーノに話し掛けられる
あなたはおひとりですか
どんなあなたなのですか
あのひとが触れた左の指が星を鳴らす
思い出して
胸を湿らせ
小さく涙ぐみながら
伏線をばらまき歩く理由を拾う
伏線をばらまき歩く星を拾う


自由詩Copyright たちばなまこと 2010-05-12 20:16:23
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