知覚する嬰児
within

眠れずに
    話し続けて窓から見えた白い月
集合場所は明かされぬ森の中
    獣達は眠らない
獣のような人間も眠らない
    人間もまた獣のように目を光らせる

夜にメスを入れると
ひとつの
卵子が落ちてきた

白々と
明けてきた朝の
精子が包み込む

汚れた下着を
着替えて
透明な殻を残し
新しい巣穴を
探す

永久凍土の中で
  ずっとラップを歌い続けて
    終わらないリリックを
      海鳴りのリズムに乗せて戦い続けていた

スーパーの角に立つ白い遍路に
並んでみたくて近付いても
違う匂いに話しかけることができない
彼に付き添う者が拒絶する

若者も
老人も
渇いた土地に
井戸を掘り
直線で
区切られた
臨死の間際

丁寧に
拭う


 臨月の太陽が
 地平線で膨らみ
 胎児の泣き声が
 羊水を震わせ
 母の憂いに
 新しい数字が与えられる


  地中に
 張り巡らされている根が
  腐らない
 理由も知らずに
  泣き出した
 少年を
  姉が抱き寄せる
 鼻腔をくすぐる匂いが
  人ではない物であった頃の
 記憶を揺り返す


自由詩 知覚する嬰児 Copyright within 2010-05-11 12:10:38
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