たもつ

 
 
門のところにクラゲが大量に発生していた
透き通ってきれいな形をしているのに
触手に毒のある種類なので
外に出ることもできない
裏門から出ようとしても
この家には裏門がないし
裏門は要りません、と大工さんに言ったのは
確かにわたしだった
道を歩いている人に助けを求めようと
窓越しに手を振ってみる
皆、水槽を泳ぐ魚を見るような目つきをして
通り過ぎて行ってしまう
自分もあんな風に魚を見ていたのかもしれない
そう思うと恥ずかしい気がして
試しに鏡を覗いてみるけれど
目をつむったわたしの姿しか映らない
 
 


自由詩Copyright たもつ 2010-05-10 22:22:52縦
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