歯車
itukamitaniji

歯車

ゆっくり音を立てて 進んでゆく毎日の中で
ちゃんと大切な物に 誰もが出会えるのかな?
耐え切れず音を立てて 壊れていった記憶たちを
大事に胸の箱の中に 片付けてゆくのさ

積み重ねてくことと 忘れてくこと
それが人の儚い 一生なんだよ
その狭間で迷って 立ち尽くしてしまうこと
誰にだってあるんだよ


ゆっくりまた歩き出す もう何個目だろう扉を閉めて
古い君が 新しい君の背中に手を振る
何処にも留まれやしないのさ 『今』はすぐに形を変える
だから僕は忘れないように ちゃんと詞にする

優しい君はきっと 何にも捨てきれずに
大きなかばんを引きずり 旅をする
その重さに 何度も疲れ果てて
立ち止まったりしながら

でもそれが君なんだよ 間違いないんだよ
もうどうしようもないくらい
泣いて欲張ってるんだよ 子供みたいに
何にも忘れたくないんだと



例えば実は僕が 作り物の
ヒューマノイドだなんて 聞かされても
笑い方泣き方 怒り方全部
間違いなく僕なんだって

あの夏の暑さとか 冬の寒さの中で
誰かを待ってた傷みも
みんなで歌った歌も 君が好きだった歌も
笑っていた君も

全部歯車なんだよ 隙間の無いように
丁寧に繋ぎ合わせて
今日も動いてるんだよ それが僕なんだよ
もうどうしようもないくらい


そうしてたどり着く 『今』という名の場所
見つけて立ち止まり また旅立ち探す
何度も繰り返し ゼンマイを巻いて
何度も何度も 歯車を繋ぎ動かして


自由詩 歯車 Copyright itukamitaniji 2010-05-10 16:12:23
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