曇り空のひかり
吉岡ペペロ

べたあっと広い横断歩道で信号待ちをしている人混みのなかにいた
曇り空だった
曇り空のひかりが広い横断歩道に溜まっていた
女子高生数人がぼくに笑顔で駆けよってきた
二十年まえなら吉川晃司や的場浩司に間違えられることもあった
いまや完璧にオッサンであるぼくになにが起こったのだろうか

女子高生たちはぼくの真横にたつ女の子に握手を求めはじめた
このまえの???いきました、あこがれてるんです、応援してます、、、口々に思いをぶつけていた
ぼくにはこの女の子の価値や背景がわからなかった
わぁ、かわいい、サインしてください、写真とっていいですか、というノリではなかった

ぼくはじぶんのビジネスマンとしての風貌を利用して女子高生のなかに割ってはいった
あなたを知らないけれど握手してください、そう堂々と言って一応女の子と握手をしておいた
それから横断歩道を品川駅のほうへ渡っていった
曇り空だった
曇り空のひかりが死体のように
べたあっと広い横断歩道に沈澱していた







自由詩 曇り空のひかり Copyright 吉岡ペペロ 2010-05-03 10:48:32
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