歌う男
nonya




コンクリートの谷底に
ぼんやり突っ立って
たくさんの季節と人を
やり過ごしてきたオマエの
歌を聞いた者はいないはずだ
それでもオマエは
歌い続けているらしい

コンクリートの谷底に
ぼんやり突っ立って
オマエの真似をするように
薄ら青い空を仰いでみたら
ポカンと開けた口から
注ぎ込まれた五月の風が
胸の内側を微かに奏でた

気がつけば若葉と人の
さざめきの中から
煌めく音符が立ち昇って
オマエに歌を歌わせていた
心地良く発泡する季節を
五月の青空の端を
オマエは確かに歌っていた





携帯写真+詩 歌う男 Copyright nonya 2010-05-02 17:46:01
notebook Home 戻る  過去 未来