創書日和【清】拭清
大村 浩一

死んだ後もしばらく
髭は伸び
爪は伸びた
倒産会社の残務整理のように
皮膚はとまどいながら惰性で仕事をした
死が内側から行き渡るには
相応の時間がかかった


この人の腹を拭う
動かなくなった腸の中で
腐敗が始まっている
これまでとは逆に
別の生き物がこの人を
食い始めている


守れなかった約束が
どうでもよくなる時が来る
とは知らなかった
取り戻しようのない時間が
この皮膚のなかを過ぎていった


くり返し何度も擦ったが
死を拭うことは
できなかった


2010/4/29
大村浩一


自由詩 創書日和【清】拭清 Copyright 大村 浩一 2010-04-30 12:50:31
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