モホロビチッチ・シンドローム
たりぽん(大理 奔)

静かに蒸発するためには
まず、皮膚を脱ぐことが必要らしい
触れることが楽しいのは
まだ溶け込むことを知らないから
お互いの、もっと内側に近いところで
それでもふれあっているだけの

傍にあるきれいなものを
皮膚の外にあるからという理由で
無関心に居られたのかというと
それはどうもちがうようだ
命を包みかくすこの皮膚の内側を
星を見るようには確かめられず
内と、外の、境界だけに
無限の興味を注ぐから

触れることが楽しいのは
誰かの境界どうしが
暖めあうからか
静かに蒸発したいということや
そんなことを忘れてしまう

どうやら、二人は境界でできているようだ
それがからだの曲線を描いている
限界と可能性の境目で
まだ溶け込むことを知らないのは
お互いの、もっと内側に近いところで
それでもふれあっているだけの



自由詩 モホロビチッチ・シンドローム Copyright たりぽん(大理 奔) 2010-04-23 01:17:30
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