ホームレス話に便乗。
虹村 凌

 するなって?喋りたいんだ喋らせてくれ。俺も大してホームレス知識は持ち合わせちゃいないが、少し喋りたい気分なんだ。便乗するぜ。


 最近じゃ見かけなくなったが、俺が小学生くらいの頃は、新宿の地下にはホームレスが沢山いた。段ボールハウスだらけで、そりゃあ凄い臭いがしたもんだった。だが、何よりも印象に残っているのは、その段ボールの家の壁に描かれた、沢山の綺麗な絵だった。誰が書いたのか知らないけれど、色々な家の壁に、色とりどりの絵が描いてあったのを覚えている。俺は彼らの臭いや段ボールの家より、その絵が感動的なまでに綺麗だった事を覚えているのだが、周囲の人間は誰も覚えていないと言う。夢だったんだろうか。誰か、知らないかな?


 時は移り変わる。低学年の小学生だった俺も成長し、次第に彼らがどういう存在であるか理解する。とにかく、家が無いんだなぁ、と言うフワっとした印象でしかないが、黒かったり臭かったりする彼らを、特別蔑む事も無く、変な人達だなぁと言う程度の認識しかしていなかった。彼らが、どういう理由でホームレスになったのかは知らないけれど、暗く陰鬱な目をした彼らを、あまり研究する事は無かった。時たま、テレビなんかで見るけれど、その出演料が幾らなのかなぁと言う事の方が気になったりしていた。


 どうでもいいが、アメリカのホームレスは、宗教的なサムシング炊き出しご飯で、多くの奴はタダ飯を喰えるから、金恵んでも煙草か酒か薬に消えるんだよなぁ…と思うと、いくら機嫌が良くて小銭がある時でも、くれてやる気にはならんのだ。さすがに、ボストンの猛吹雪の中で小銭を恵んでくれ、と言う奴を見た時には心動かされかけたが、演出かも知れないと思ってやめた。だって俺も奴の立場だったら、暖かい地下道よりも外でやるもんなぁ。
 あと一芸で小銭稼ぐ奴もいたな。歌ったり、踊ったり、バケツとかでビートを刻んだり。効率が良いのかは知らんけどね。あとは、紙コップを掲げて「ヘイ、ピープル!ヘルプ!」と叫ぶ奴もいたな。日本のと比べると、何かエネルギッシュな奴らが多いんだよなぁ。そりゃあ、片足が無くて困ってる奴とかもいたけど、全体的に元気な奴が多かったなぁ。

 ホムンクルスって言うマンガで、主人公が半ホームレス生活をしてんだけど、本当にああいう生活してんのかな。コンビニとかファストフードでバイトしてたけど、一回も持っていかれた事は無かったなぁ。あ、全部分別して生ゴミで出してたからか。しっかし段ボールも何も持っていかれなかったぞ。

 と言う話です。面接とバイトで疲れたので今日は寝ます。おやすみなさい。


散文(批評随筆小説等) ホームレス話に便乗。 Copyright 虹村 凌 2010-04-10 21:55:15
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