あの日の空は
鵜飼千代子

           初めて君と会ったのは
           空の碧い夏だった

           君は微笑みながら
           僕の元に駆けて来て
           少し困ったように微笑んで

           僕の生き方が
           嫌いかい?
           普通じゃないと、
           笑うかい?

           たぶんそれはホンの一秒で
           こんにちは と首を傾げる君に
           慌てて視線ずらして

           何処に行こうか

           電話でならメールなら
           あんなにも全てスムーズなのに
           心臓の音が伝わらないように
           笑っちゃうくらいクールな
           僕がいる

           「空の大きな場所に行こう」
             心の声で話しかけて

           「君もきっと気に入るよ」
             どうしてそう思ったのだろう

           ほらここだ

           僕がやっとの言葉を口にする前に
           君は

           すごーい、おっきな空だね 
           一億円の空だね 

           空に大きく手を広げ
           高い空に視線を投げる

           たとえば それが夜景なら
           そういう表現もあるだろう
           だけど、ここにあるのは
           だだっ広い空で
           お金で買えるものじゃない

             空の広い高い場所で

           ねえ 飛んでしまえそうだね

            君のスカートが風をはらみ
            ぱたぱたと 音を立てる

           消える ?!

           抱きしめたかっただけど
           そんなときの僕は
           息を呑んでただ
           立ちすくむだけで

           くすり

           大丈夫
           君はまだ風と遊んでる


           それが君との始まりだった 



         1999.06.24.  YIB01036 Tamami Moegi. 
         初出 NIFTY SERVE FPOEM


自由詩 あの日の空は Copyright 鵜飼千代子 2010-04-08 21:46:28
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