悪夢
……とある蛙

 
入ったときは営業職のエリートで

国内海外飛び回り、

買い付けた資源や文化の紹介

もちろん行かない所は無い、

西はジブラルタルの突端で
愛を語ったこともある。

東は経済の都ニューヨーク
カウボーイ気取りの赤毛野郎とも渡り合った。

ところがそのうち支店が閉鎖
日本に帰って 行くとこもなく
上司は挨拶すらしなくなり、

お茶くみ自分で行くしか無く、

海外に出たいと希望を言えば

マニラでたこ焼き屋でもやれば

単身赴任
一人でしかも観光ビザ
何が出来るわけでもなく
現地の病に冒されて緊急帰国も
職場放棄と揶揄されて

行くあてもなく古い伝票整理、
毎日毎日古い伝票整理
パソコンにすら触れない。



ふっと 楽 したくなって

なにも言わずにトイレに行くふりして

持ち場から逃げ出した


なにもかもが 嫌 になって

なにも言わずにトイレに行くふりして

持ち場から逃げ出した


少しだけ 楽 したくなって

なにも言わずにトイレに行くふりして

持ち場から逃げ出した


指図されるのが 嫌 になって

なにも言わずにトイレ行くふりして

持ち場から逃げ出した




ばっかじゃないの
あほ草
間違ったこと 言う奴
意味理解しろよ
どうでもよいことを

等と 独り言言って

酒かっ喰らい眠った



翌朝起きて持ち場に行ったら

持ち場はきれいになくなっていて

なにを言っても誰 振り向かず



ここぞとばかり

アホなやつほど!
講釈のひとつも
たれてインテリ風

なにがそんなにうれしいのか?
人の悪口得意技
まぁ聞いてやってくれい

と独りぽっちで叫んだ

直ぐ警備員が飛んできて
外にたたき出された

って 夢を見た。

起きたときは
持ち場の机の前だった。

またまた続く伝票整理。


自由詩 悪夢 Copyright ……とある蛙 2010-04-07 09:46:35
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