宇宙遊泳 / ****'01
小野 一縷






黒目を搾って炭化した果汁の渋味を垂らして
滝のように濡れてゆく白い部屋を睨み
眼光の輝度を上げて透視力を発揮しろ
眼球の白に血走る毛細血管を密集させて開拓してゆく
暗室に舞い降る塵の裏側に無数に光る世界の入り口を突き抜けて
眩しさに影も生まれぬ白夜に浮いて
反転したコントラストで見下ろしては見上げているんだ
故郷の星を


・・・・・・・・・pi・・・・・  


見えますか?

  あの小さな星

・・・・・・・・・pi・・・・・・・・・


限りなく望の絶えた 闇の深さは限りなく
望郷の展望を避けるかのように
潤んだ星は 落ちながら上昇して
今は 遥か
彼方へ霞む   一滴の雫


帰ろう

宇宙に独りのアストロノート
脳味噌の 落下傘開いて
微かに吹いてくる 太陽光の鐘の音を 帆に受けて
集束する瞳孔をくぐり抜け 
時計回りに 舞い降りる







・・・ ・・・・・・・pi・・・・・

・ 聞こえますか   ・・・

・・・  ・・・pi・・・・・・


これより  ・・・

     ・・帰還します 

・・pi・・・


瞳の大気圏を抜けて   ・・・

・・・原初の海へ  
     ・・    降下します・  ・ ・・

・・・・・・・・・・・・pi・・





ああ

故郷が  赤く  燃えている

なんて 小さい 世界の火だろう



星を目差した 流れ星
破れた空の薄い狭間を抜けた時
西陽が街の迷路の凹凸を 斜めに長く伸ばしてた



誰に迎えられることもなく
生還し 目蓋を開いた 宇宙飛行士
夕闇と 黴臭い毛布に 包まれて
壁に見上げた 星は 青





携帯写真+詩 宇宙遊泳 / ****'01 Copyright 小野 一縷 2010-04-05 01:55:01
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