文具店
たもつ

 
 
今日はワカサギが良く売れる
いつもは店の奥まったところに並べているだけなのに
学生も社会人風の人もノートや鉛筆には目もくれない
いっしょに良い匂いのする消しゴムや
綺麗な色の蛍光ペンなどを薦めても
ワカサギしか買って行かない
おかげで完売したけれど
来る人、来る人、みなワカサギのことを聞き
残念そうに帰っていく
どうにかしよう、と試しに床に丸い穴をあけてみる
水面が現れる
釣り糸を垂らすと次々にワカサギが釣れる
せっかくなので、ワカサギ入荷しました
と看板を掲げて店頭に並べる
誰もワカサギに興味を示すことなく
店の前を通り過ぎる
それどころか
目が死んでいる、とか
生臭い、とか
文句ばかり言われる
結局すべて売れ残り
閉店後、揚げ物にして食べる
とても美味しいけれど
どれもこれも
壊れた文具のなつかしい味だけがする
 
 


自由詩 文具店 Copyright たもつ 2010-04-03 17:28:52縦
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