うつくしくせかいが俯いている
あぐり



せかいを美しくみるために
そっとプラグを挿す
あなたが指を動かすたびに
さざなみのように細やかな電流、
わたしの両腕を駆けていく

好きな言葉の感触は
「かん」から始まるもの
それはカンデンスキー
あるいはカンタータ


(感じてるなら声をあげないと)


せかいにはわたしに感銘をあたえるものがなんにもないんだろうか
って
そんなふうに考えていたつたなさよ
せかいを美しくみるためには
まずはこのまなこの照準、
カチリとあわすのです


知るために感じるために
だれかと手をつながなければいけないの
そのぬくもりの湧き出る水底
そこから沁みてくるものをけんめいにきゅうしゅうするのだ
このわたしの、わたしだけの美しいせかいを
みつけるためにわたしは
わたし以外のもので染まるのか
ただそれでも
なにか
なにかほしかったんだ
美しいと
心から
うたえるものがほしかったんだ


あなたがわたしの涙で濡れて
わたしは少しわらう
その睫毛がこの虹彩にとびこんでくる瞬間。
その睫毛のしなやかな強さ、
あるいはその睫毛の根元のみずみずしさ
わたしはわたしは
とても美しいとおもう


ゆるやかにくだろう。
堕ちていく
かんたんなことでわたしは動けない
それでも廻るせかいの果てには
たしかな言葉があるかもしれない
三文字に無限の意味を含ませるあなたの
その指先を今夜も咥える
きっと
昨日とは違う味がする

感染していく美しさのテーゼが
ふるわせるわたしの声帯
感性のはかなさも脆さも
それを愛おしいとおもうだれかの肌の上、今日も
うつくしくせかいが俯いている





自由詩 うつくしくせかいが俯いている Copyright あぐり 2010-04-02 22:48:57
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