鶏卵のある偶像崇拝
salco

窓外の大空に掛かる十字架
朝日を浴びて白く屹立する
それは福音だ

彼は夜闇に生まれた
太陽に焼かれ、荒地に又砂浜に
足跡を残した
それはゴルゴダへ続く

砕かれた四肢から血が伝い落ち
沈黙の苦痛は長々と留まって
灼熱の西日の中で彼は絶命した

割れ落ちた天蓋の上から再びの暗黒が
インクのように垂れ落ちて地を包み
その屍は中空の墓標の上に
放置されてあった

長らく、がくりと項垂れて、
冷え干乾びてそこに掛かっていた
それから屍は下ろされ、
愚者達の嘆きの中、岩穴へ葬られた

ベツレヘムに流星の降りた夜
またへブロンに奇跡の放たれた昼
エルサレムの神殿を見下ろす
血のようなゴルゴダの夕べ

そして彼は夜明けに甦った
その魂は地平に光り亘り
下界の驚愕を遥かに大空へ駆け上がり、
砂漠へも舞い降りた


燦然と輝きつつ白い十字架は
青天の霹靂に浮かんでおり
その両翼と足元の僅かな黒い釘痕から
今も尚鮮血が細い線を描いてとめどなく
伝い落ちている

見よ、彼の血に養われ、
小さな透明の卵が我々の掌の中で、
そのささやかな輝きを増して行く
各々の心の聖堂の窓辺に置いた卵達は
誕生の時を待って輝きを増す


自由詩 鶏卵のある偶像崇拝 Copyright salco 2010-04-01 01:40:01
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