東京午前12時
虹村 凌

お前の歌が聞こえない
まぎれも無く俺の青春だったのに
お前の夢も見ない
思い出も聞こえない
俺の青春だった
お前が

ポートアーサーで生まれた
あの女の歌は聞こえる
岡山で生まれた
あの男の歌は聞こえる
東京で生まれた
お前の歌が
聞こえない
思い出が
聞こえない

まるでジャンキーのブルース
剥き出しの100万ボルトには程遠い
だらし無いブルース
誰か聞いているかい
お前の冷めたさを
忘れられない

斜に構えてさ
誰も何も知らなくてさ
煙草を吸いながら
聞いていた
お前の歌

暗い孤独の中で聞いたブルース
ずっと聞こえている
汚れてイカれて傷だらけの阿呆にゃ
まるで暖かいシャワーみたいな歌を
また聞かせてくれ
何処かの爆弾よりも
震える程に大事な
お前の声で

生まれ変わりやしないんだ
思い出も聞こえないし
歌声も覚えていない
だからもう一度
歌ってくれよ


自由詩 東京午前12時 Copyright 虹村 凌 2010-03-23 00:12:40
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