坂本冬美が「また君に恋してる」を歌う頃に
虹村 凌

足下に広がる銀河を越えて星屑の彼方へ一直線の稲光
みたいになってしまいたいって思いながら
色んな人達が都庁やエンパイヤステートビルにのぼる
そして分厚いガラスの向うに目を向ける

イマジナリーラインをぶった切って
嘘も本当もわからなくしてしまいたい
180度向こう側の世界
電線にぶら下がったスニーカーの下で
泣きながら幸せを待っているんだ
借り物や紛い物の幸せじゃなくて
美しい幸福や平和と
ちょっとの醜い不幸と混乱で
みんな幸せになっちゃうような幸せを
電線にぶら下がったスニーカーの下で待っている
待っているのは白い薬なんかじゃなくて
そんな幸せを

イマジナリーラインをぶった切って
恥も誇りもわからなくしてしまいたい
180度こっち側の世界
百億もの恥をかいたら今よりも立派になれるかな
百億もの恥をかいたら今すぐに立派になれるかな
百億もの恥をかいたら今よりも楽しくやれるかな
百億もの恥で

恥が誇りになって誇りが恥になる
人生のその中でまだ恥をかけるかな

恥の多い生涯を

たった二十五年で
死んでおくべきだったと思う地点を幾つも通り越して
長く生き過ぎてしまった気もするけど
ラインの向こう側
ラインを越えて立っているのなら



自由詩 坂本冬美が「また君に恋してる」を歌う頃に Copyright 虹村 凌 2010-03-19 09:53:37
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