縦にいっぽん白い線のはいったおなかが
すこしずつふくらんでいく春です
わたしの下着が汚れずにいたから
とてもとても不安でした
赤いものを疎ましく思っていたはずが
今はほんとにそれがほしくてたまりません
ベッドの下には浅瀬ができている
ひたり、ひたりと足を浸けて
朝焼けのなかでひとり立っている
くるぶしに打ち寄せる波の
その中でゆっくりと膝下まで下着を降ろしていく
(そっとピンクの剃刀をとりだしてみたんです
あんまりにもするどすぎるからって
じぶんでも怖くて隠してたピンクの。
左手首は冷えていたからそっと、
あたたかい光を描いてみる明け方)
ながれるものをすべてこすりつけてわたしはあんしんしたいのです
うまれないうまれない、なにひとつうまれんのです
ぬるくなっているしたぎのなかにおちたあかさをわたしのうみにする
おなかを押すとぜんぶきえてくれるんではないかなと思いました
隣で眠るあなたのまつげが何かを予感して震えているのでした
それでもわたしはまた痛みを求めてあなたに抱きつく
そんな風にして溢れるまで
ながれるまで
あなたのぜんぶを求める
なんにもそだたないうまれないうみのうえでわたしたちはなんどだってだきあうしかすべがないんです。
すこしでも安心しようとして
またこすりつけるあかさはただ錆びたにおいのする血液で
それがあの澱んだ海ではないことだけ
ぼんやり眠りに堕ちる頭の中でまたたかせている