転がる石のように
nonya


偶然に弾き飛ばされて
偶然に引き寄せられて
偶然に蹴り落とされて
偶然に抱き締められて

僕はここにいる

何気なく左を選んで
怖くて右に逃げ込んで
勇ましく左に踏み出して
泣く泣く右へ折れる

僕は際限なく枝分かれする
坂道の途中を転がり続ける

掌にのるほどの魂に
ありふれた模様の脂肪を着せて
どこかで貼りついたラベルは
もはや薄汚れて判別不能で

僕はのそりと昨日を忘れながら
僕はもそりと明日を愁いながら
坂道の途中を転がり続ける

かつては何かの原石だと
言われたこともあったけれど
どうにも意志が柔らか過ぎて
いまだに石にすら成れてはいない

でも
ここまで転がってきて思うのは
ダイヤやトパーズに成れなくても
気持ち良く転がり続けることが
一番大事なんじゃないかってこと

ナンバーワンには成れなくても
オンリーワンだと思い込まなくても
僕達は生まれた瞬間から
転がるように出来ているのだから
楽しく石ころのふりをしようってこと

キザにスラロームを描いてもいい
転がるまいと不様に頑張ってもいい
落ちた花弁をお洒落にまとってもいい
黙りこくって斜面に従うのもいい

際限なく枝分かれする坂道は
どれも同じ場所に
繋がっているのだから

転がり続けてしまう僕達は
誰もが同じ場所へ
向かっているのだから

転がり終えたその場所で
僕達は
本物の石になるのだから




自由詩 転がる石のように Copyright nonya 2010-03-16 19:10:47
notebook Home 戻る  過去 未来