姫様蛸壺地獄 
salco

グリコのクリームコロンを買って中身のクリームをすぽんと吸って
筒状の衣は要らないのでカレシか犬にでもくれてやる
おいしくないわけじゃないけどクリームをすぽんと吸うのがおいしい
真空の暗黒に向けてクリームがすぽんと発射される、世界の歓び宇宙の歓び
特にこのクリームだけを好きというわけでもないのだよ
嗚呼落ちかかる夜のヴヱルにかんばせ溶けて、ヘッドライトの牙を掠めて
自転車ですっ飛ばす逢魔が時の楽しさよ 
そんな自由、そんな楽しさのために生まれて来た!

女の子が殺される、女は毎日殺される
男子がそれを願うから、男がそれを望んだからだ
女に生まれると
公園で、学校や塾、会社やデート、バイトの帰り道あまつさえ自宅前
自宅で寝てても殺される 起きてる間に殺される
脳で渦巻くリビドーの、ただ1発の射精と等価交換されるのだ
あるいは頭蓋に築いたささやかな帝国に属する臣民、奴隷、消耗材として
車がブンブン通る県道沿いの歩道ですれ違いざまメッタ刺しされ
お人形みたいに横抱きされてさらわれて、口を塞がれ脱がされて
引っ越し先のマンションの住人にひき肉にされてトイレに流され
行きずりのワンボックスに引っ張り込まれて山の斜面にばら撒かれるのだ

うっそマジむかつくんだけどお! ざけんなおめー、今死ねよ 
男子と同じ言葉で男子に言いたい事を言える男女共同参画社会基本法とやら
飯炊きと出産にしか能の無い、家畜としてのカスとしての女達を地球の活動域へと
押し出してくれた男女雇用機会均等法とやら、理念上の基本的人権の尊重とやら
しかし元より男女は決して「平等」などでは永劫ないのだ、という現実を
女という種はちゃんとわかっておかねばいけないのだそうだ、特に膂力の点で
魂胆の点で。
男の暴力から逃れ得る特権的地位を獲得したという訳には生涯ならないのだ、
という事実を知っておかねばいけないのだそうだ
言葉は通用しないよ、言語領域じゃないから
行動原理は

こうして人類の雌は、満員電車で見知らぬ野郎に尻を触られ胸をまさぐられ
押し倒しやすい体格をしており抗い切れぬ体力であり絞めるにちょうどいい頸をしているがゆえ
いまだに、そしてこれからも夜道を一人で歩くことを許されない
ごくごく一部の不特定多数の異性の疾患は
タマの機能がアタマを侵蝕し、脳まで逆流した精液で髄液が白濁している程だから
顕微鏡で見れば白質の溝を精子が泳ぎ回り、隙間にびっしりつかえて夢見ている
その衝動は、頭蓋骨を撃ち抜いてでもやらない限り奔出の正しい道筋には導いてやれないので
その欲求解消点が、凡そよちよち歩きの幼児から寝たきり婆さんまで範囲を問わないのだから
未明は常に、間断なく危険であるということ、白昼に単独で誰かと会うのさえ
死の危険を孕んでいるかも知れぬということは最低限、認識しておかねばならないのだと

知りもしない男や好きでもない男の手にかかって終る恐怖と絶望と断末魔よりは、
少しく慎重にあと5年ぐらいは生きて、キレやすいカレシやケチな亭主に
毎晩殴られ蹴り殺される自己存在証明の方が、少なくとも悔いは惰性を帯びて軽いだろう
どんな女の子も、人殺しに投げ与えられるべき枝肉では決してないのにも関わらず
自分が常に危うい玩弄物でしかないということを知って置かねばいけない
例えば昨日リンチで死んだ中学生の男の子、明日追い詰められて鳥になる少年
この虚弱な男子達もなべて女の子なのだ、弱いがゆえ膂力で劣るがゆえに攻撃を受ける
我々のどこが自由だ? どこが図太い? 何がきれいだ? どこが一体、人間扱いだ?


自由詩 姫様蛸壺地獄  Copyright salco 2010-02-24 05:23:00
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