マイセルフを探して
中原 那由多

ただ、呼吸だけをしていれば
それが唯一の救いになっていたのだろうか

砂漠に捨てられた緋色を
ドライフラワーと呼ぶことはつまらないおふざけ
ひび割れた部分を優しく撫でてみて
前頭葉で水の滴る音がしたのは
暗黙の了解に囚われているからなのか


白線の上を慎重に歩いていた頃は
その先がどこに続いているのかなんて知る必要はなかった
白線が消えそうになっている今となっては
終着点までちゃんと理解できているはずだけど
今度は進む勇気の意味を知らなくてはならなくなっていた


迷走していることをいつしか忘れている

拾った雑誌の広告のほとんどに誤植があり
捨てられるべくしてここにあったのかと
悟った頃には既に雨は止んでいて
それでも傘をさしたまま屑籠を求めて歩いていた


つい掻きむしった首筋に
いたわるように添えた冷たい手
陽当たりの良すぎる部屋からは
詩集のページをめくる音がかすかに聞こえている

曖昧な答えの中ではまだ海洋深層水が循環していて
水風船のようにはじけたなら
身体と溶け合うことができるのに
水風船のようにはじけることに
時が止まることよりも怯えている




自由詩 マイセルフを探して Copyright 中原 那由多 2010-02-16 14:42:04
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