無題
手乗川文鳥



恥ずかしい生命
僕はこれから全ての季節を殺しに行く
ようやく開いた花弁を
飛び交う鳥の嘴や羽根を
丁寧に剥ぎ時には乱暴に毟り取る
地面を這う影を燃やし
壁に貼られたポスターを破り
視界から溢れ出た文字を分解する
そうして僕は何もない場所に出ていき
もう戻ってこない




君のいる季節では
新緑は色を変えることを止めない
日差しは決して腐ることなく
ウルトラバイオレットが君を刺し続ける
荒廃しないビルディングを
君がどうやって傾けるか
僕はもう見届けるつもりはない




全てのこどもたちに手渡された
絶望の種子を
僕は略奪する
全ての大人たちが育ててきた
倦怠の樹木を
僕は薙ぎ倒す




僕はもう帰ってこない
そこにいるのは丁重に新調された身代わりの僕だ
君は変わらず新しい僕を愛し続けるだろう
身代わりの僕はそれを拒絶しない
与えられたものを飲み込む用意ができている
そして帰らない僕の葬列を
新しい僕たちがくらい顔で作る
君は笑っている




やがて世界は惰性で動くことをやめる
その前に僕は空を撃ち落とし
海を捲り取る
身勝手な思想で
僕は銃声を響かせる
楽隊の風貌で



美しいと声を出し
途端に恥ずかしくなった生命に
僕は逃げることから訣別する
一足先に行こう
次は君に
季節を殺す武器が渡される
選択はご自由に
そのパンの味だけ
僕は忘れずに出ていく
そうして二度と
戻ってこない





自由詩 無題 Copyright 手乗川文鳥 2010-02-08 02:26:31縦
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