こんにゃく(について)
たもつ


キッチンで君と二人
こんにゃくをちぎっていく
娘は一人、二階で
静かに宿題をしている
こうして手でちぎると味がよく染みこむのよ
君が母親から教えてもらったように
僕は君から教えてもらっている

こんにゃくの中心を目指して
ひたすらちぎっていく
その度に中心は移動し
やがてどこかに消えてしまう
ちぎっているようで
実は表面を撫でているにすぎないのだ

こんにゃくについてさえも
僕らは何も語ることなどできない
不必要な言葉に肥え、太り
おそらく人生の折り返し地点など
とっくに過ぎてしまった

鍋がいっぱいになる
それでもまだ
こんにゃくは山積みになってる
これで何を作るの
君に聞くと
わからない
とだけ答える
キッチンが夕闇に沈んでいく
二階の方から鼓動のような
小さな物音が聞こえる




自由詩 こんにゃく(について) Copyright たもつ 2010-01-31 17:55:50縦
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