腐食
鎖骨



ずっと覚えている
長いこと凭れてきたあの約束
なんども繰り返し巻き戻して
いやだね、よのなかはつらいね
死にたい、死のうかいっしょにもうだめだと
おもうかたちが重なったらそうしようしようねって
交わしたこと錆びつかないようにテープに録音して
涙目に鼻水まみれで笑った当時で築30年の幽霊団地
公園の脇の下水処理場がいいかな
団地の屋上かな
約束した、忘れないように
興奮して眠れなかった昔日



きみは、いまのきみは
とても美しく、あるのだろうね
風の噂のひとつも聞かないけれど
なにもおもいださないで
なにもおもいださないで
先のこともできるだけかんがえないで
それがしあわせです
しあわせになるんです
できるならひとりでなく
産んで、そうしてから死ぬといいです
ぼくはずっと今でも、聞いています
繰り返し再生しています
テープはもう、埋めてしまったから
このままで誰とも交わらずにいることがぼくの
約束の履行の手段です
きみは、きみは、きみが
どう思っているのか、今でも、あの日のことを
錆びつかせずにいるのか
聞きたいけれどそれはよくないことだから
もう寝ます
西暦二千十年の一月がもう終わります
過ぎていくことを受け入れられるように
おやすみなさい






自由詩 腐食 Copyright 鎖骨 2010-01-23 03:18:25
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