創書日和「迎」 どういたしまして。
逢坂桜


おっちょこちょいのあたしは―

   道を歩けばつまずいて、

   待ち合わせは早すぎて、

   座れば荷物を置き忘れ、

いっしょにいる彼に、謝ってばかりだった。

何度も彼の

  「you're welcome」

を聴いた。

帰国子女の彼は、時々おどけて、会話に英語を混ぜた。

別れは冬、濃いブルーグレーの空の下。

泣かない泣かない、と手を握りしめて―

  「いままでありがとう。あたし、しあわせだったよ」

  「you're welcome」

それを聴いて、ついに泣いてしまった。

  「me,too、て言わないんだね」

なぜだろう。

とても傷ついた彼の表情が、いまも忘れられない。


自由詩 創書日和「迎」 どういたしまして。 Copyright 逢坂桜 2010-01-12 22:05:41
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