ショートレビュー・サンデー 12 レコポエ版
露崎


 子供の病院 / ヒダ・リテさん
 http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=198517

 おもしろかった。ひじょうに映像的なフレーズが多くて、ふくらませれば短い映
画くらいは撮れちゃいそうだなとおもいました。強引な飛躍を読者の想像力で補わ
せる作品ってけっこう多いですが、これくらい丁寧なつくりだと詩になれていない
人でも読みやすそうでいいと思う。
 癒しというと胡散臭いイメージもありますが、それをうまく回避しつつ、けっこ
うベタな最後の一行に着地させるあたり、お見事!とおもいました。みんな疲れる
よ、こんな時代じゃ、なんてつぶやいているうちに、わたしはいい年になり、今の
子供はまた大人になるんだねえ。




 カレーライス / 森下悠里さん
 http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=197762

 平凡なことがなんだかうれしい。そういうことってあるよなー。誠実な作品だと
おもいます。シンプルすぎてどうしても強い引きがない部分はあるけれど、それで
いいじゃないか。と思えるし、すべてがすべて、刺激的である必要はないとおもっ
た。逆にこういう詩が発信されない状況になってしまったらなんだかさびしいもの
がある。




 ハタチ女の憂鬱 / ゆるこさん
 http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=193236

 よかった。「憂鬱なんだろな」とつたわるシーンの連続で独特の浮遊感がある。
たまに、わけもなく静かになりたいと思う瞬間があって、べつに死にたいとか大げ
さな感情ではないけれど、限りなくゼロになりたいというようなことって、けっこ
う誰にでもあるとおもう。感情の空白(飽和)とでも言いますか、そんな瞬間を詩
でうまく表現しているとおもった。ラストの夕日のシーンはいいですね。サンダル
を投げる一瞬の爽快感と、燃える太陽の激情が入り混じって、ぐっときました。



 
 五月 断片 / 如 月さん
 http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=195201

 制御された文体で、一定のトーンに保たれた静けさがよかった。タイトル通り、
じつに断片らしい断片。分散した思考からゆっくりと焦点を結んでゆくような感じ
をうけました。解釈としてはよくわからないというのが正直な感想ですが、そのわ
からなさがセンス・オブ・ワンダーにつながる、というマジックがあって、それま
であと一歩というところだとおもう。
 細部では、三がおもしろかった。パスタを茹でているシーンが少ない言葉で想像
できる。気泡とか、単語の選択がすてき。たしかに茹でるとき細胞分裂みたいな気
泡でるもの。




 水槽 / もも うさぎ さん
 http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=197184

 言語的な快楽にうったえかけてくる作品で興味深い。ファンタジックな作者独特
の言葉選びとくちずさむのにちょうど良いリズムが、この雰囲気づくりに役立って
いるのだと思う。美しく心地の良い文章が「主」で、テーマが「従」となっている
ような気もするけど、詩をつくるうえで、したいことをのびのびとしている感じが
してそこが一番よかった。


散文(批評随筆小説等) ショートレビュー・サンデー 12 レコポエ版 Copyright 露崎 2009-12-30 03:21:39
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