銀猫

風が
静かになりました
背骨が曲がったまま
切り取られそうな
刃物を持った風が
止みました


世界では
他愛ないことですが
いまのうちに
背筋を伸ばして、
伸ばして
僕のこころの中心から
きみの肌色の
少し奥までの距離を
縮められたらと思います

僕はまだ黙りこんだり
ひがんでみたり
不安の虜になっていますが
行くあても道も
僕の前にあるようです

ただ
地図が破れてしまったので
迷うことは許してください
時々してしまう舌打ちも
気付かずにいてください


風が止みました
切れた唇にしみるので
塩辛いなみだは
忘れていてください

風が止んで
頑なな僕の鳩も
羽根を繕い始めました
寒い空のなかへ
溶けて行けるよう
急いでいます


夜に眠ればあした
明日に眠れば
またあした

静かに風が
止みました







自由詩Copyright 銀猫 2009-12-28 08:36:27
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