突き刺せよ、渦巻きに
石川和広

最近

この間近に、海は無く    
無く

シャワーを止めた後の排水溝

  髪 からまり つらくもつれる
僕の渦


   鳴門の渦潮を
   鳴門の渦潮を
   見たのは
   大橋の上から


見たのは
    中学生のときだ 父の車で運ばれぼんやり風に吹かれた
覚えている次の渦潮
    仕事をして遊覧船に乗っていた
自閉症の人と
人と


   渦潮のポイントまで来ると他の介護者に、自閉症の彼を見てもらい
   ぼくは同い年くらいの、癲癇を持った女の子と複数の渦潮見た


   すごーい   すごーいと
揺られ揺られ、風に吹かれ吹かれ


彼女は、発作が元の事故で、亡くなった
彼女は、消えてしまった
          ぼくの渦巻きは、とれない


恋していたわけではないけれど、タオルでひとつぶひとつぶ落ちる水滴に、重力の悲しみに耽ると


     渦巻きから毛穴に信号が送られ
     鏡に写る自分の顔と見つめあい
      とりもどせ ぼくを




       ぼくをおおおと、突き刺すと


       渦巻きは、脱衣所の隅に隠れた


自由詩 突き刺せよ、渦巻きに Copyright 石川和広 2004-09-20 18:03:41
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