防波堤の風
中原 那由多
かつて心を置き去りにした土地で
足元を掬われないように前へ、前へ
敷き詰められた岩の隙間で浮かんでいるのは
汚れた発泡スチロールの欠片ばかり
忘れられたオモチャの残骸は
ひきつった笑顔を崩さないようにしている
出来るだけ人目を避けようとした
小さくなってゆく鼻歌
退屈な遊びをすることで
大人にでもなった気分に浸る
壁に寄りかかり、あくびをしてみれば
やはり殺風景なままだった
薄れた記憶の中にはもう誰もいない
散乱した紙屑を拾い集めながら
失うことで救われると願ったことを
苦渋の選択だったと言い張ることに決めた
行く先々で自己陶酔者を気取り
停滞する空気を強引にかき混ぜてきた
寂しさを紛らわせたくて
交わることを求めて初めて
相互理解の意味を知った