花つばめ
Shaka



透き通った青の天井見つめて、
寒空の下
薄いボロボロの服を着て、
その子は寝ている。
大きく目を見開いてその子は眠っている。

チェマダンの往来の真ん中で、
一人のコッチョビが眠っている。
誰も足を止めようとはしない
誰も見向きもしない寒かろうと声を掛ける者もなく、
疲弊した人の流れは休みもせずに
流れて行く

チェマダンの食料品店の余り物や腐りかけた物、ゴミ箱の中の物
昨日まで命を繋いで来た物が
今日は別の誰かの命を繋ぐ
ただそれだけのこと何も変わりはしない。


暖を採る為に線路に横たわり、手足を切断されてしまったのだとコッチョビが云う
松葉杖の暮らしは不自由で、
物をかっぱらうには向いてない
稼げなくなったと寂しげな顔をして
少し恵んでくれと云う
案内人は駄目だと首を横に振る

今、助けても
明日には仰向けになり、あの青く澄んだ天井を眺めるだけだからと
厳しい目で僕を制した

キリが無いんだよ
何十人、何百人助けても
この国では跡を絶たないと
悲しい目をして云う。

マイナス20℃の冬が広げた厚い氷の上、

オモニは、
ある寒い冬の夜に豆満江を渡って
中国へ行ったきり帰って来ない

アボジはいない
僕は知らない
何も知らない

アボジの顔も
自分がいつ、何処で生まれたかもしらない

ただ…、
オモニが待っていなさいと言ったから、僕は独りぼっちになっても待っているのさと、
彼は笑ってみせた

また何時かの冬の
豆満江が凍った夜にオモニが
きっと帰って来るんだと
彼は信じてる

きっと帰って来るんだと、
彼は強く信じてる。



自由詩 花つばめ Copyright Shaka 2009-11-27 04:27:48
notebook Home 戻る