楽園という名の酒場があった
テシノ

煙草とジャズの匂いのする扉の前ではいつも
客が脱ぎ捨てた今日一日が
肩をすくめて苦笑していた
逃げ込むようにカウンターへ辿り着くパンチドランカー達に
タオルではなくおしぼりを投げ
マスターは正しい酔い心地へと導いてくれるのだった

囁くようなスツールの軋み
煙草の煙りで天井が遠退く
優しく微笑むポスターに
話しかけている酔っ払い
薄暗い店内に電球ではない何かが
ほんのりと浮かび上がらせた
夜ごとの愛すべき風景

誰でも席を立つ時は
また明日
見知らぬ客達が答える
また明日
流れ行く人生の中で
一瞬だけ楽園を共有した住人達

また明日
よい夢を見ましょう


自由詩 楽園という名の酒場があった Copyright テシノ 2009-11-24 18:03:59
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