東京の狭くて薄汚れた四角い空を見たいんだ
虹村 凌

はがれて丸まったシーツの上に座り込んで
銀色のノートパソコンを開いているよ
ハローハロー
ハロー世界
真夜中に煙草を吸いながら
真っ昼間にゲームをしている奴と喋っている
時差だってよ
地球の奇跡と文明の発展を同時に味わってるぜ

今日の気温が昨日とどれほど違うのかもわからない
昨日は外に出てないからさ

窓の外はずっとSOSが飛び交っている
その幾つかが銀色のノートパソコンや
紺色の携帯電話に飛び込んでくるんだよ
でも俺には助けてやれないんだ
何もしてやれねぇんだ
煙草を吸ってコーラを飲んで
起きてから着替えもせずに
この二日間ずっと履きっぱなしの黒いジーンズで
やる事も無くずっと部屋でうずくまってるってのに

それでもお前を救う事が出来ない
そんな言葉は持ち合わせていない
だからいっそ殺してしまおうかと考える瞬間もある
苦しみながら生きている姿を見るのは辛いんだ
だから俺は誰にも助けて欲しいと言えない
そうお前じゃ俺を救えない
それくらいわかってるさ
誰でもいいんじゃない
誰に助けられたいかもわからねぇけど

お前を
殺してしまおうかと思う事はあるよ
苦しみながら生きているなんて
それでも生きているのが素晴らしいとは
どうしても言えないんだ
だから

なぁ教えてくれよ
いま東京の空はどんな色なんだい?
相変わらず薄汚れた灰色で
田舎者達に散々な言われようだろうけど
なぁ
こっちの空が好きになれねぇよ
あの狭くて四角い空を見たいんだ
今日の東京の空はどんな色だった?

たまに考えるよ
もし俺のこの命ひとつで
せめて一日でも世界から涙が消せるならって
そう考える事は無いか?

なぁ
どうする事も出来ねぇんだ
吸い殻と空き缶ばかりが増えていくよ
ごめんな
何も出来ねぇんだ


自由詩 東京の狭くて薄汚れた四角い空を見たいんだ Copyright 虹村 凌 2009-11-16 17:28:59
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