All Miracles Mean Life
笠原 ちひろ
たとえこころは暗くても
いのちはあかるい
たとえ世の中は暗くても
たましいはあかるい
たとえわかりあえなくても
たとえ憎しみあっていても
血塗れの戦場や
やるせない食卓で
たとえなにもできなくても
いのちはあかるい
たとえ見てみぬふりしても
たましいはあかるい
言葉をかわさずすれ違う泣いてるクラスメイトも
ネットのこちら側で惨劇をチェックする自分も
ほんとうは誰しも
ゆるしゆるされる
資格があるはずだ
ほんとうは誰しも
ゆるしゆるされたいと
おもっているはずだ
汚れつちまつた悲しみを
抱えていたって
いのちはあかるい
未来に対する漠然とした不安に
錠剤のんでも
たましいはあかるい
地に足つかない夕暮れに
いのちはあかるい
みんなを嫌う夜更けにも
たましいはあかるい
暗くしずんだこころから
吐き出すように糸紡ぎ
おびえて逃げ出し
布団のながで
指噛みながら
ふるえてたって
いのちは
無条件で
あかるいものだ
いのちであるだけで
あかるい
たましいであるだけで
あかるい
もうもどらない時間への
墨色の後悔や
絶望の果汁をちゅうちゅう吸いながら
まるくなっていたいなんて誘惑
ぶったぎって
ふりはらって
そのおくで
さやかにひかる
いのちを
いのちを
美しさのふりをしたものを
あばくことは簡単だけれど
美しさのふりをした
みにくいものの
もひとつ奥まで
目をこらし
そのおくで
さやかにひかる
いのちを
いのちを
えぐられた心臓の奥でだって
白くひかる完全な球体
すべての
奇跡は
いのちを
意味する
All miracles mean life