支配され、忘却のかなたに蝶を見る
たちばなまこと

支配される
夜で
寝床で
ハロゲン灯の橙の中に
うずもれて
心臓のかたちをからだじゅうで描く
まぶたを閉じて
息を受け
からだじゅうで
泣く

いつも
おいてゆかれる心がまえを
ととのえている
からだじゅうでシグナル
ちいさくて見えないから
背中に蝶を飼う

色は遠浅
いくつ重ねても
永遠にはほど遠く
それならば
ぬくもりの冷めた声に
ありがとう
忘却を許されたような夕餉
日本酒のかおり
杏の悪戯

からだじゅうの宿り木から
うみ鳥を呼び寄せ
歌を教える
もう
生まれる
私は先生と呼ばれ
再び胸を締め付ける
教室の窓から外へ
放つ紫色の勾玉たちに
あなたたちの心臓をいれて
飛ばしてください

今夜はフリルをひらくことにする
朝に逢えるまで





( アスファルトを漂う煙
  都下の草花は焼かれてゆく
  遺伝子をおぶって
  生きている、とつぶやく  )


自由詩 支配され、忘却のかなたに蝶を見る Copyright たちばなまこと 2009-11-10 19:10:42
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