横断歩道
あおば

           091110




毛皮を着て
山の中を彷徨う
鉄砲で撃たれそうな気もするが
この山の中は静かで
誰も訪れない
雪が降ってきて
毛皮を着ていても寒い
コンビニで当たったカップ麺を暖める
3分間の間に麺がほぐれて美味しくなるのだと
しみじみと眺めていたが
2分過ぎに我慢できなくなって
食べ始めてしまう
我慢のならない人ですねと
木の枝から落ちるつららにも笑われる
つららがつららとならんでいると
麺を噛みながら思う
お汁を飲み込んだ後には
食べ物はなにもない
口を開けて
地面を眺めるが
白い新雪が生きもののように優しい曲線を描いているだけで
横断歩道を渡って
居酒屋に入る
この町では
雪の降る日でも
営業しているのは
小腹が空いた人たちが
山から下りて
訪れるからだと
思う
コンビニでは
くじ引きが大流行で
くじ運の良い人は
ニコニコ顔で外へ出て
それから
静かな山に入る
カップ麺を啜り
横断歩道を渡り
居酒屋に入る
運の悪い人は
つまらなそうに
真っ直ぐ帰宅する
家では鍋がぐつぐつと煮えていて
家族は満足そうに笑みをたたえて
山の雪景色をテレビで見ている
子供たちは
受験勉強したりして
その日の義務を果たしている
カップ麺に満足できなかった僕たちは
居酒屋に入り
翌日は
コンビニでクジを引く
運の良い人は山に入り
運の悪い人は帰宅する
帰宅するのも悪くないと思う人は
居酒屋への通路を遮断され
コンビニでカップ麺を家族の人数分買い込み
山へ寄らずにそのまま帰宅する
帰宅するとカップ麺にお湯が注ぎ込まれ
小腹が空いて来るが
眠気に誘われ
寝てしまう
朝になれば
雪が積もっていて
山に向かうのは
無謀だと分かる
カップ麺を人数分抱えて
横断歩道を戻ってくる人に
会う


自由詩 横断歩道 Copyright あおば 2009-11-10 00:44:03
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