うずくまるから助けて欲しい
虹村 凌

皮肉も倦怠も飽食し尽くしたと思っていたけど
別にそんな事無いんだろうな
案外居心地も悪くないし気分だって悪くない
停滞は趣味じゃないと思ってたけど
楽っちゃ楽だからな
面白くは無いけど

映画の見過ぎと漫画の読み過ぎで
目が濁っちまったのは気付いてる
夢の見過ぎと空気の読み過ぎで
目が悪くなっちまったのは気付いてる
甘い理想と甘い言葉の聞き過ぎで
耳が塞がっちまったのは気付いてる
苦い正論と苦い事実の聞き過ぎで
耳が遠くなっちまったのは気付いてる

愛も夢も理想も希望も
全部嘘っぱちに見えて
笑うしかないんだ
部屋の中に転がる孤独と退屈
手に余った鬱屈と屈折が
そうさせているのかも知れないけど

それでも死なずにいる
それでも狂わずにいる
それでも倒れずにいる
そのしつこさは病気並み
とっくに病んでるけど
笑えるから
まだ大丈夫だろう

どこに助けを求めていいかわからず
伸ばしかけた手をいつも縮こめる
誇大妄想と被害妄想と加害妄想で
酷く歪んだ雑音と鈍く尾を引く耳鳴りが重なって
今日も布団にうずくまる

生きるとか助けるとか
全部を定義しなきゃいけない気がして
線を引けない事ばかりの扉の向こうに出ていけない

こんにちは、倦怠
ご機嫌いかが?

独り衣擦れの音が続く部屋の中
上の階の床が軋む音を聞きながら
耳を塞いでうずくまる
助けて欲しい


自由詩 うずくまるから助けて欲しい Copyright 虹村 凌 2009-10-30 14:50:24
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