オレンジ色のベースギターが
虹村 凌

愛してる
と言う声が遠く残響のように
聞こえた気がしたけど
恋人なんてどこにもいない
鈍く尖った耳鳴り
オレンジ色のベースギターが
ゆっくりと首を締め上げていく

誰か
名前を
呼んでくれ

助けてくれと
街中に散らかったエスオーエスが
足下に絡み付いている
鳩がついばんで
知らない方向へ飛んで行くのを見ていた
点滅する信号が
ゆっくりと目の奥に流れ込んでくる

チカ
チカチカ
チカ

殺してやる
部屋の中で転げ回る低い音が
人間はいつか必ず裏切ると呟いている
当たり前の事じゃないかと笑うと
お前はわかっていないと言って
ドアの下の隙間から出ていった
窓の外で救急車のサイレンと
ヘリコプターが飛ぶ音

冷蔵庫の唸る音が子守唄の様に
白くて薄い壁の向こうから聞こえる
音を消したテレビが何かを伝えようと
必死に身振り手振りで教えてくれるけど
何を言っているのかわからない

ガーガガ
ピガガ

ガガ
ピーガー

オレンジ色のベースギターが
錆びた色と掠れた声で
笑うんだ


自由詩 オレンジ色のベースギターが Copyright 虹村 凌 2009-10-28 15:08:07
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