おひとり戦記 (朗読用)
あおば

        

停車場で
吉備団子あげます
ください
くれ
おくれ
家来になった顔した侍達が
ぞろぞろ
動物の面を着けて歩いてくるから
ぎびだ〜んごっ
といいながら
口をもぐもぐさせて
電車が来るのを待ちながら
萎びた地球に
聞いてみた
感じたままを素直に
吐いてみてと
言ったのだが
萎縮したのか
言いたいことがまとまらない
ようだ
だから負けたのだと
声なき声が呟くが
自主性を無くし
ここにも用がないから帰ると言えないのが
辛い
カーナビの渋滞情報を横目に
喫茶店でお茶をする人は居ないかと
目をすうーっと走らすが
喫茶店はどこにも見えない
ここは公園のベンチ前だ
東京生まれは撃たれ弱いと
背筋を伸ばす
直射日光の延髄切りに耐えた首筋も
脊髄パットの衝撃には耐えきれないようで
街道ライダーは
暑い中を身軽な格好ですっ飛んでゆく
ぶつからないように
こけないようにと
それだけは切に願う
神仏を信じていないものの願いは
どこに向かうのか
鎌倉街道から
永福寺に向かう途中
明日からは秋といわれたツクツクホウシが
聞き取れないだみ声で
懸命に経を読む
まだ少し蒸し暑いのが救いと
公園の水飲み場で水を飲む
縄文人の居住跡がコンクリートで保存されている
四阿のような家か
縦穴式の住居か
定かでないが
いくつかの穴が
大地に深く穿かれていて
太い柱でも大丈夫だと
言いたそうな遺跡跡を残して
神田川沿いの道をひたすら辿ると
帝都電鉄改め京王井の頭線電車がスマートに走る
湘南型2枚窓のスタイルを前面に残し
20メートル4扉車は
車を持たないハイティーンの身軽な躯を座席に埋め
定刻に発車する
小銭入れの中には



「poenique」の「即興ゴルゴンダ」投稿作の前に「停車場」を連結して改稿。「即興ゴルゴンダ」でのタイトルは鈴川ゆかりさん


自由詩 おひとり戦記 (朗読用) Copyright あおば 2009-10-26 14:21:56縦
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