不一致
noman

今日私は〈一人の人間〉らしくあるために
「それでも」という言葉を5回使った。だが5回という数
は多すぎたのか、目を閉じたときに光軸の
ずれた光が飛び交うのが見えただけだった。外は一日中静
かだった。何か口に入れてないと無意識に
「どうして」などと言ってしまいそうだったので、親指の
爪を一日中噛んでいた。外に出ても見るべ
きものはない。〈一人の人間〉らしくあるために私は嘘が
嘘となる資格を与えられる瞬間をテレビ画
面の中に探した。見るべきものだけを見て、知るべきこと
だけを知りたかったが、見るべきものも知
るべきことも何もないことに気付いた。仕方なく窓を開け
ると目の前の道路にアスファルトと同じ色
をした一組の男女が蹲っていた。声が出るようになったら
彼らに尋ねてみよう。どうしてそんな風に
〈一人の人間〉であるかのように振舞うことができるのか


自由詩 不一致 Copyright noman 2009-10-22 02:22:14
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