2009/10/19
鎖骨



空想が先行する
光速で潜行する
瞬間、閃光が起こって
頭から爪先までぼくが乗っ取られてしまう
やめてよね、誰かとの約束を蒸し返すのは
千項にも及ぶ不可侵条約




互いを、隔てている
かつては存在しなかった朽木色の橋
(顔がよく見える距離なのにあっちへはたどり着けない)
その向こうから、きみが
ぼくと造りの似かよっていた頃の笑顔で投げつけてくる白色のペイントボール
力一杯に 胸一杯に ぼくを 否定するオーバースローイング
灰色く薄汚れたぼくを忌避する気持ちをまったく隠さずに
とても分かりやすくて好きです変わらず
あいしていますあなたのそういうところ
性善説を信じていたきみをうらぎってごめんね
それでも博愛主義はつらぬきとおしてね
その山の高さに積まれたボールを投げきったあとには
きみは海よりも深く空よりも広いとかそんな恥ずかしく拙い言葉では
追いつけないほどのひろいひろいひろいひろいひろいふかいちいさなかわいいこころでもってみんなをしあわせにしてあげてください
灰色の中途半端で臆病だった野良猫精神の負け犬のごとく情けない
性別もなかったひとつの肉は白い祈りに埋もれて
新しいきれいな世界の礎になります
そのしあわせを噛締めながら終わらせます
蚊のなくような電気信号
誰ともひとつにならなかったことが誇りでした
ありがとう、ありがとう
もう生まれてこなくてもいいよね







自由詩 2009/10/19 Copyright 鎖骨 2009-10-19 00:38:40
notebook Home 戻る  過去 未来