チキンレース
モコ



あなたと私は大の親友だった。

ある日、あなたはこう言った。
「どっちの方が先に耳に穴を開けれるか勝負しよう。」
あいにく私の性格は負けず嫌いだった。
だからその日の夜に画鋲で右の耳を刺して、次の日あなたの前で耳についたばかりの光を髪を上げて見せた。

そしたらあなたはその次の日、
右だけではなく左にまで穴を開けて、おまけにへその穴に穴まで開けて、
「これで文句ないでしょ。」
と私に言った。

あなたは私以上に負けず嫌いだった。




またある日、
あなたと遊んでいるとき私はあなたの隣で万引きしてみせてこう言った。
「あなたも、できる?」
その後、あなたはすぐ隣で私以上に価値のある物をとってみせた。
それからあなたは、何回も繰り返し、私が気づいた時には酒やたばこにまで手を出すようになっていた。



またある日、
あなたはこう言った。
「どっちの方が先に男をつくることができるか勝負しよう。」
負けたくない一心で私はあなたに嘘をついた。
「もういるよ。キス止まりだけど。」
そしたらあなたは出会い系サイトに入り、一週間後に見た時には、あなたは私の知らない男の腕の中にいた。
その後、あなたは何人もの人に抱かれ、唇を交わし、セックスをした。
最後には、あなたは自分自身の家を出て、みず知らずの男の家で暮らすようになった。



私は、負けを認めた。
しかしあなたはもう、戻ってはこなかった。




あなたと私は、
いつしか口数が減ってきて、距離がどんどん広がっていった。
そしてあなたは、
わたしがどれだけ大きな声を出しても、聞こえないぐらい遠くのところへ行ってしまった。


こうしてあなたと私は会わなくなった。

もし、もしどこかですれ違っていたとしてもあなたは…きっと私も、ただのどこにでもいる通行人でしか思わないだろう。






あなたと私は大の親友だった。



あなたと私をこんなにも引き離したのはあなたのせいでも、私のせいでもない。チキンレースをしなければ生きてはいけないようになった、今の世の中だ。




自由詩 チキンレース Copyright モコ 2009-10-17 03:03:42
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