バトル・オブ
ブライアン

拝啓から敬具まで。
保険会社のプラットフォームは、
全人類の安全は保障できません。

殺すことが目的となった戦争を、
ボトル・オブ・ブリテンの前身は、
惨敗で糾弾する。

戦いの結果、人は死ぬはずだったが、
殺すための戦いの死にロマンは存在しない。

とはいえ、血で大地を潤し、
第三帝国の滅亡を誘った、バトル・オブ・ブリテンは
ヤルタからマルタまで。

世界の歴史は動き、自動車とテレビ。
高度経済成長の中、遠い島国は、
高齢化を迎える。

その国の高齢者は一体どんなだった?

国道113号線には架空のカーテンが引かれる。
無音の田園を横断する鉄のカーテン。
暗転を司るのはどっちだ。

背後で雷が鳴っている。
風。強く吹く風。
稲穂が揺れる。まだ、緑色の。
バトル・オブ・ブリテンが、音を立てて横切る。

鉄のカーテンを越えた、母は、
唐突に止まった車のエンジンの前で腕組みをしている。
冬ならば、横殴りの雪が母をあっという間に襲うだろう。
稲妻は爆撃。

墓場からゆりかごまで。
母が取り出した保険会社の用紙にサインをする。
死は、保険会社では取り繕えない。
死を向かいうつのだ。
やがて背後から襲い来る雷に対して、
母の腕組みの姿を、死してもなお、取り繕うのだ。

それらに、サインはいらない。


自由詩 バトル・オブ Copyright ブライアン 2009-10-10 03:24:18
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