女のひと
捨て彦



女のひとは一人でなんでもできる
映画館に一人で行くし買い物もする
ウインドーショッピングをして
自分に合わないか合うかを
何時間でも一人で懸命に考える
大好きなバンドのライブに行って
そのためにわざわざ東京まで行くし
知らないクラブにもいく


女のひとはよくわらう
どうでもいいことに
尻尾と首と手と手と耳と
足を五六本くらいよけいにつけて
何がそんなにおかしいのか
ほんとうによくわらう








傷ついたときはよく泣く
謂れのない誤解による暴言を
まるで大きなそのかたまりを
いっぺんにおれにぶつけてきて
爪で肌をひっかいて部屋をめちゃくちゃにする
だけど次の日には
全部忘れる
嘘みたいに全部忘れて
次の日にはまた笑ってる


過去を投げ捨てることが上手
薄情なくらいに投げ捨てる
おれが持ち続けている重大な悲しい出来事を
さもなんともないように笑う








女のひとはとても自由で
女のひとはなんでもできる
女のひとは一人で汚れることができる
男よりも簡単におちることができる
自分の意志で自分を
まるで知らない他人のように
蹴落とすことができる
頭にしばられないで
正しい身体で会話をする
いつでも整然と自由でいる
少なくとも
おれよりはずっと








女のひとは一人でなんでもできる
そしてその全てが物語になる
指先の動きだけで会話が生まれる
そのうつくしさ、からっぽさ、
足りなさ、
目線
ぜんぶ
苦しくて悲しくてとても切ない


終わらないこと
いつか
どこかに消えていった女のひと
どこからか
またやってくる女のひと
昔から
今でもずっと変わらない
その変わらなさ
おれのあこがれ



自由詩 女のひと Copyright 捨て彦 2009-10-09 18:35:40
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