羊と終電
都志雄

神々の舞台装置の奥
冷たい月明かりの夜が
深い淵を照らし出す

凍てつく太陽
麻酔の覚める羊たち
葬るネクタイ
愛って何時?

祖父母と歩いた畔道も
今は闇夜に濡れそぼち

光に眩んだ眼を閉じて
今さら見つける新芽の息吹に
誰かの埋めたアルミの針が
膿んだ心のひだを刺す


ああ
見せてくれ
どこまでも伸び続ける塔からの
はるか《下界》の眺め

ああ
教えてくれ
ぎらついた雲のむこう
螺旋階段の先の先、
奉られた二進法の論理


モアレの連鎖のうねりの中で
蒼ざめたマトリョーシカの奥底まで
あとひと駅






自由詩 羊と終電 Copyright 都志雄 2009-10-06 20:11:04
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