終わる世界
e.mei



ひとつのメルヒェンが世界を往復するあいだに
路地裏の女はひらがなで大きく書かれた
しなないという文字を
街の中心地へと押し出そうとしている


(光の海で星と泳ぐ少女の物語も日が暮れる頃には薄れていく
 六月に生まれた少女は冷たいという感情を
 知らないまま大人になるのだろう
 毎日僕は誰かに送る最後の言葉をさがしているのだけれど)


一言目にはしなないと言ってください
路地裏の女は目を伏せて言った
仕組みなんて誰も知らないと続けたあと彼女は祈りを捧げた
まっすぐに切り取られた世界の上では少女の種子が芽を出している


 ひかりがきえる
  ろうそくのひがきえるとみんな
   しんでしまう
    まるでえいがみたいだとおもいながらぼくは
   しにんのやまからあるきだしてかみさまのみきにもたれかかる
  ろめんをはしるでんしゃをささえるしょうじょといっしょに
 ひをけさないようにおわりをみとどけましょう





一人ですか? 此処にいるのは僕一人だけなのですか?
廊下で目を覚ました僕は世界の神さまに訊いたのだけれど
しがもう過ぎ去ってしまっていたことを僕はすでに知っていた
またがもうないことも僕はすでに知っていた





 酷く眠くなってきた
 六錠ほどの睡眠薬を酒で飲んだ僕は良い気分になって
 しさくを中断することに決めた
 まるで子供みたいに少女に抱きしめられて僕は少しだけ眠る


これで終わりだよ
風が白く見えるところ
世界という負の堆積の崩壊が始まる
通りに雨は降りしきり
終わりの終わりのそのまた終わり
そして僕はゼロになる
終わりをむかえる


自由詩 終わる世界 Copyright e.mei 2009-09-29 13:49:05縦
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