サヨナラのテーゼ
南波 瑠以


■秋
すべての色を飲み込んで
ただ透明である、秋

■チャイム
夕陽が窓ガラスに映ったとき
風がいつも置き去りにするもの

■図書館
古びた新築の匂いがする

■デジャヴ
誰かが間違って押した
巻き戻しのボタン

■冬
春にぬくもりを渡して
一瞬だけ銀色の、冬

■体育倉庫
高い跳び箱ほど
空洞は大きい

■グラウンド
四ツ葉のクローバーは
けっこうあると思う

■3組
後ろの窓ガラスには
昨日つけた5ミリほどの傷がある

■保健室
校内でいちばん
白の似合わない世界

■春
くしゃみをすると形が変わる
万華鏡のような木漏れ日がある

■青
朝と自分の
反応式によって生成する色

■空
それはまるで
紫陽花の花言葉

■屋上
駆け抜けてしまえないのが
いつだってもどかしい場所

■夏
壊れたヘッドフォンから
潮騒が聴こえるとき

■サヨナラ
また会えると信じられるときだけ
目を開けて言う、サヨナラ






自由詩 サヨナラのテーゼ Copyright 南波 瑠以 2009-09-16 00:30:14縦
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